ジェンダーSF小説 「心地よい弾丸 heavenly bullet」

純粋で、傷つきやすく、したたかで身勝手な、男女の生存戦略。

【8】カフカ

キノコは、マスコミの目を避けるために

安アパートを転々とする作戦をとっていた。

そんな生活のなか、いままでの自分といびき皮のことなどを

自伝風の小説にまとめたい、という気持ちがわきおこっていた。

 

その日、キノコは「小説はどうやって書けばいいのか」という漠としたテーマで

「死の山」の作者である先輩芸人、跨由と対談することになっていた。

対談は、雑誌「カフカ」の企画として行われることになっていた。

 

カフカは、群像やすばる等のいわゆる文芸誌ではなく、

ファッション雑誌のように写真ページが多めで大きめの版の、

タレントや俳優~ミュージシャンなどが好きな本について語るなど、

ライト層向けに小説を紹介するような雑誌であった。

 

キノコが先について待っていると、後から跨由がやってきた。

「ごめんごめん、思ったよりだいぶ遅なってしもたわ」

キノコ「あー、股由さん今日はありがとうございます」

跨由「自分、今日はどうしたん!?」

キノコ「いや、小説を書いてみたいんですよ、自伝の」

跨由「いや、かっこよ。雰囲気だいぶ変わるなぁ」

キノコは普段とは違い、撮影用にと赤いドレスのような服を着ていた。

 

キノコ「撮影もあるいうことで、スタイリストの方が用意してくれたんですよ、

 こんなんも面白いかなぁおもて」

跨由「面白いよ」

キノコ「なんかバカにしてます?w」

跨由「いやしてないて、新鮮やなぁ。髪の毛もだいぶ伸びて

 今後はそんな感じでいくん?」

キノコ「いや、今日はたまたまですよ、

 明日なったら坊主になってるかもしれへんしw」

 

キノコ「跨由さんは、それで撮影するんですか?」

跨由が「俺は、このままやな。そうすよね?」と近くにいる記者に聞くと、

「あ、跨由さん、そのままで大丈夫です」と記者の女が答えた。