キノコは、マスコミの目を避けるために
安アパートを転々とする作戦をとっていた。
そんな生活のなか、いままでの自分といびき皮のことなどを
自伝風の小説にまとめたい、という気持ちがわきおこっていた。
1
その日、キノコは「小説はどうやって書けばいいのか」という漠としたテーマで
「死の山」の作者である先輩芸人、跨由と対談することになっていた。
対談は、雑誌「カフカ」の企画として行われることになっていた。
カフカは、群像やすばる等のいわゆる文芸誌ではなく、
ファッション雑誌のように写真ページが多めで大きめの版の、
タレントや俳優~ミュージシャンなどが好きな本について語るなど、
ライト層向けに小説を紹介するような雑誌であった。
2
キノコが先について待っていると、後から跨由がやってきた。
「ごめんごめん、思ったよりだいぶ遅なってしもたわ」
キノコ「あー、股由さん今日はありがとうございます」
跨由「自分、今日はどうしたん!?」
キノコ「いや、小説を書いてみたいんですよ、自伝の」
跨由「いや、かっこよ。雰囲気だいぶ変わるなぁ」
キノコは普段とは違い、撮影用にと赤いドレスのような服を着ていた。
3
キノコ「撮影もあるいうことで、スタイリストの方が用意してくれたんですよ、
こんなんも面白いかなぁおもて」
跨由「面白いよ」
キノコ「なんかバカにしてます?w」
跨由「いやしてないて、新鮮やなぁ。髪の毛もだいぶ伸びて
今後はそんな感じでいくん?」
キノコ「いや、今日はたまたまですよ、
明日なったら坊主になってるかもしれへんしw」
4
キノコ「跨由さんは、それで撮影するんですか?」
跨由が「俺は、このままやな。そうすよね?」と近くにいる記者に聞くと、
「あ、跨由さん、そのままで大丈夫です」と記者の女が答えた。