ジェンダーSF小説 「心地よい弾丸 heavenly bullet」

純粋で、傷つきやすく、したたかで身勝手な、男女の生存戦略。

【3】女芸人の百合小説 <いびき皮>編【その2】

【3】女芸人の百合小説。●<いびき皮>編の【その2】 ジェンダーSF小説「心地よい弾丸 heveanly bullet」

https://togetter.com/li/2304344


注意●158が2つあるが、中身が違う。番号のつけ間違い。そこから1つ番号がズレてるはず。
とりあえず、そのままで。

●(連載中)
https://twitter.com/dsa0/status/1751859311733858368        

 

111
キノコは、泥酔事件を理由に活動自粛を命じられた
それは、いびき皮の自粛も同然だった

自粛中にもかかわらず、キノコの暴走は続いた

<いびき皮キノコ今度は傷害事件!!
 オカマバーで
 ニューハーフと大喧嘩>

<ホストで豪遊していたキノコ
 備品を破壊し、600万円の損害賠償!
 出禁に!>

  
2024012915:32:21

112
頭を悩ませた事務所は、とうとう
いびき皮と契約解除することにする

いびき皮が契約していた事務所
ジャスミンズは、

元お笑い芸人の男
ジャスミン南山が開設した事務所だ

  
2024012915:36:27

113
通称ジャスさんは、
インポで女性恐怖症だが
女芸人マニアだという

学生時代には落研に所属しており、
芸人をやめた後は、南山ユーモア教室をやっていたが
芸人としては成功しなかったが
人を発掘、指導する能力はあったようだ

  
2024012915:38:06

114
インポで女性恐怖症ということで
彼がスキャンダルを起こすことはないと
太鼓判を押されていたが

雇用していたマネージャーが
いびき皮の活動の障害となったことを
とても残念に思っていた

  
2024012915:40:09

115
そんななか、
いびき皮に再起してほしいと思っていたが
事務所全体のことを考えて
いびき皮を退所させることにした。
苦渋の決断だった。

ところが捨てる神あれば、拾う神あり
ということで、いびき皮は間を置かずして
別の事務所に移籍することができた

  
2024012915:43:02

116
事務所を移籍したキノコは
前の事務所の悪口をいいはじめた

ジャスさんには恩義はあったし
前事務所での活動などに
楽しい思い出もないわけではないが

同時に、頭の片隅に「ゆっこに浮気させたのは
前の事務所が仕組んだ陰謀」という考えが浮かんでいた
「マネージャーとジャスさんはグルだ」と

  
2024012915:46:22

117
新しい事務所は、ドラゴンフォース
名前こそ大げさだが、前事務所よりだいぶ規模の小さいポンコツ会社だった。

ドラゴンフォースは、
DM法律事務所=ドラゴンマウンテンの代表が
半分、趣味の片手間でやってるような事務所だった。

  
2024012918:16:47

118
DMも大きな事務所ではなかったが、
一度、棚からぼたもちのような感じで
偶然「死刑を無罪に」できた裁判があり
そのことを例に「死刑を無罪にした法律事務所」ということで週刊誌に載ったことがある。

  
2024012918:19:07

119
キノコは、ドラゴンに移ってから
あまり大小を気にせず
コツコツと仕事をするようになった。

ドラゴン的には「いびき皮」目当てで仕事が増えて
知名度もあがり喜んでいた。
「法務に強いタレント事務所」として
問題児「いびき皮」を安値買いしたのは大成功だった

  
2024012918:21:53

120
誰もが使いづらい、問題児いびき皮。
芸能事務所としてはポンコツだが、法律トラブルに強いドラゴン。
うってつけの組み合わせだった。

彼女らが問題を起こしても、
ドラゴンは問題を仕事にしてる弁護士事務所が母体なのだ。

売れっ子だった二人を
手に入れるにはまたとないチャンスだった。

  
2024012918:26:38

121
キノコはその日、精神科の診察を終え
薬待ちをしていた
彼女は、広い薬局のイスの1つに座って
ミルミルを飲んでいた

最近の彼女は調子がよかった
薬も自分なりに減薬していた

そんな彼女がふと目を落とすと
受け取りカウンター近くの下の方に
「とんでもないもの」があるのを目にした

  
2024013013:03:43

122
キノコは以前、YouTubeの動画でこんな話を聞いた

人は「白熊のことは考えないで下さい」というと考えないことができないのだそうだ。

そう言われると、むしろ白熊のことを考えはじめるので、白熊を考えないためには、他の「戦車とかケーキとか他のこと」を考えるが必要があるのだという。

  
2024013013:09:18

123
キノコは、白熊を考えないために
遊んだり、仕事をしたり、あれこれと工夫をした

それでも時折、その白熊がひょこひょこでてくるので
ありとあらゆる救援を呼び寄せて、どうにかその白熊を
頭の中の奥の奥の小さな箱に、マトリョーシカのように何重にもして閉じ込めていた

  
2024013013:12:18

124
白熊は、広い薬局のいくつかある受け取りカウンターの
その横の足元に、ひょっこりと顔をだしてこちらを見ていた

キノコは戦慄した
また「あの時の顔」になる思いがした

待ってる間に読む用の書棚があり
そこにある雑誌にはこう書いてあった

<いびき川 ウサギ結婚!!
 相手は元マネージャー>

  
2024013013:21:23

125
彼女は「すーっとした感じ」を使うことにした

「すーっと」は、
「あの時の顔」になった時にできる防御を、
自分にダメージなくできる彼女が編み出した技だった。
いわば「あの時の顔」の良いとこどりだった

今の彼女は進化していた

  
2024013013:32:56

126
白熊の攻撃に耐えながら
すーっとで応戦していた彼女は
「おちんちんがついてないか」調べたくなった

もしついていれば、これは夢ということになる
トイレに行こうかと思ったとき

自分の番号が呼ばれた
厳しい状況であったが、これは気をそらす援軍になるかもしれないと思った

  
2024013013:35:02

128
キノコが受け取りカウンターに向かうと
薬剤師の女の人がいたが
「あっ、ちょっと待ってくださいね」と奥に引っ込む

その間に、キノコはポーチから頓服用に飲む薬を取り出した
これは不安やイライラや眠れないときに飲む用で
彼女はこれを、錠剤の割れ目で半分にしてピルケースに入れていた

  
2024013018:00:17

129
キノコはいつも半分ずつ飲んで様子を見るのだが
その時は3粒、つまり1.5錠分を残っていたミルミルで飲みこんだ
医師からは、1錠飲んだら数時間あけるように言われてる薬である

彼女は、薬剤師に早く帰ってこいと思い始めた
一刻も早く家に帰りたかった

  
2024013018:02:25

130
薬剤師の女の人が戻ってきて言った
「すいませんー、これで全部ですかね
3種類、おくすりお変わりないですかね」

キノコは言葉を発せずコクリとうなずいた

彼女の薬は3つあり、
・朝夕きまった時間にのむもの
・頓服で飲むもの
・イライラを抑えるという漢方、これも朝夕に飲んでいた

  
2024013018:05:15

131
3つ目の漢方は、前の病院のときからもらっていたもので
そこの先生とは相性が良くないので今の病院に変えたが
漢方は良いような気がして、ここでも出してもらっていた

  
2024013018:07:35

132
薬剤師「お薬のほう、先生からご説明されてますかね
 なにか変わったこととかないですか?」

キノコ「ハイ…」
 ほとんど声にならず唇が動いただけのように頷いた

薬剤師「今日はちょっと調子悪い感じですかね」

キノコは愛想として、すこし困ったように眉を八の字にし、力なく微笑んで頷いた

  
2024013018:10:34

133
薬剤師「じゃあ、お会計のほうさせていただきます…xxxx」

キノコは、ペイペイで支払いをすまし
ビニール袋に入れてもらったのを空気を抜いてきゅっとくくり、リュックの中に放り込んだ

途中バレないように、股間をさわり確かめたが
やっぱりおちんちんはなかった

  
2024013018:13:24

134
支払いをキノコはもう一度、白熊のところに戻った
まだ薬は聞いてないかもしれないが
飲んだことでちょっと安心し、はやくも少し生気が戻っている

その恐ろしい怪物を手に取ると
キノコは、ウサギの結婚を知らせるページをめくった

  
2024013018:16:24

135
---
その日、記者はカメラマンと一緒に
なにかネタはないかと
ウサギのマンションの近くに車を停め
ダメ元で張っていた

そこにウサギが男と一緒に出てきたのである
カメラマンは何枚も写真をとる

二人のあとをついていくと彼らは区役所に入っていくのである

  
2024013018:19:48

136
記者らは一般利用者のような顔をし中に入る

ウサギと彼氏は、一応ちょっとした変装のような格好をし
用意していた婚姻届けを提出したのだ

カメラマンは隠しカメラで写真を取り続け
偶然おとずれた大スクープに胸を踊らせていた
彼らにとって今までで一番のネタである

  
2024013018:22:28


137
彼らは慎重に二人がすべてを終え
区役所を出た瞬間に、一眼レフを構え声をかけた

彼氏は「違います、税金の相談で」ととっさに適当な嘘をついたが
ウサギは下を向き、難問にクラスでたった一人答え、
先生に誉められた小学生のような顔で、はにかんでいた

  
2024013018:25:14

138
---
その結果生まれた記事が、今薬局で、
キノコの両手で開かれていた

キノコはざっと見ただけだが
「中身は、いま見ないほうが良かったかもしれない」と思った
今や全身に、白熊との戦いによる傷を負っていた

  
2024013018:29:21

139
「早く帰ろう」
このままでは行き倒れてしまうような気がして
キノコは家路をいそいだ

だが、最後の力を振り絞って
コンビニでこれからの回復を過ごすための
食料を買いだめしておくことにした

  
2024013018:33:41

140
コンビニに入る時、
店から出る二人組の男の片方が
連れと話しながら、キノコの肩にドシンとぶつかった

キノコ「ああ、すいません、大丈夫です?」
よろけるキノコ
あきらかに自分がぶつかられたのに謝った

男は「いやっこちらこそ、大丈夫すか、
 ごめんなさい」と片手チョップを顔にかかげた

  
2024013018:36:57

141
はやけに低姿勢で、愛想のいい
しかしそれに似つかわしくない表情と様子の女に
なにかヤバイ奴の感じを察した

キノコも相手の顔をみて、それを感じた
キノコの思い込みかもしれないが

  
2024013018:38:41

まとめを更新しました。「【2】女芸人の百合小説。●<いびき皮>編の【その1】 ジェンダーSF小説「心地よい弾丸 heveanly bullet」」 togetter.com/li/2303653

  
2024013019:39:23

142
キノコはコンビニでいろいろなものを買った
おにぎり、アンパン、バナナ、
そしてタンパク質をとるために
ゆで卵、プリン、かまぼこなども買った

タンパク質は栄養を考えない、いびき皮の二人に
「意識してとるように」言い、
それぞれにダンボール箱プロテインも買い与えていた

  
2024013019:43:00

143
キノコは、いつも豆乳でプロテインを割っていたが
大きいのがなかったので牛乳を久しぶりに買った

お酒も買おうかと思ったが、今買うとやけ酒になりそうなので買わないでおいた
その辺もキノコは「進化」していた

  
2024013019:44:51

144
部屋につくと、キノコは思った

「次の仕事は無断ですっぽかそう
その次の、その次の仕事もそうしてやってもいい

事務所も、世間もあたしを大目に見てくれるだろう
前の<浮気>のときもそうだった
大暴れさえしなければ、多少の粗相には寛大だろう」

  
2024013019:47:56

145
キノコ
「私はこれから長い冬眠につくんだ

芸能界もやめてもいい
いびき皮を解散したっていいんだ
これから、あたしの新しい人生が始まるんだ

さぁ何をはじめようか
これは神様にあたしに休めと言ってくれてるんだ
これはあたしにとって一つのチャンスなんだ」

  
2024013019:50:43

146
そうしてキノコは、トイレに向かた
冬眠するには、うんちとしっこを
出しておいたほうがいいだろう
とくに、もよおしているわけではないが、

一応トイレにむかうと、普通の量のおしっこと
小さめのうんちが出た

  
2024013019:53:11

147
石鹸で手を洗いながら、キノコは歌いだした
薬局にいたときよりだいぶ気分が落ち着いていた
半分以上は、くすりのおかげだろう

「いび~きの ときぃの な~かでぇえ~
いびぃ~きの とき-の なぁかで~」

  
2024013019:55:47

148
「いびきの時のなかで」は
いびき皮の1つ目のコンビ名だった

その由来は、彼女たちの中学生時代にあった
あるとき、うさぎの家族が全員家をあけ
うさぎが一人で夜を過ごすことになった

二人は悪だくみのような気持ちで
一泊、一緒にうさぎの家で過ごすことにした

  
2024013019:59:47

149
最初お菓子を食べたりテレビを見ながら
わいわい、だらだらと過ごしていた二人は
一緒にベッドの中に入った
そういうことは初めてではなかった

抱き合って、いたずらのようなキスをして
キノコは「ゆっちゃん」と甘えだした

  
2024013020:02:54

150
「ゆっちゃん」は、キノコが
ウサギと二人きりのとき
最大に甘えだすと呼び始める言い方だった

ウサギは「また赤ちゃんになりましたかぁ?」と言った
キノコは、ウサギを抱きしめてもぞもぞした

  
2024013020:05:51

151
キノコがまた「ゆっちゃん」と言って
おっぱいを求めると、ウサギは
服をまくりあげてキノコの好きにさせた

ウサギは、赤ちゃんにされてるのではない声を出した

  
2024013020:06:29

152
そうして二人は
「彼女たちなりのプレイ」を終えると
二人で一緒に寝てしまった

しばらくしてキノコが目を覚ました
ウサギは、ぐぅ~ぐぅ~と大きないびきをあげていた

「うるさいなぁ」と思いつつ
もう一度寝ようとするが、いびきが気になって
寝ることができなかった

  
2024013020:09:29

154
「あたしがいびきで寝れへんあいだ、
この子は呑気に夢を見てんのか」と思ったが
自分が出てきたと言われたのは嬉しかった

ウサギがトイレに行ってるあいだに
キノコは眠りにつくことができた

  
2024013020:12:19

153
一度、ウサギがトイレに起き
キノコが
「ゆっこ、いびきすごいな目ぇ覚めたわ」と言うと
ウサギは
「かえちゃんが夢に出てきたよ」と言った

  
2024013020:43:23

154
キノコは
「あたしがいびきで寝れへんあいだ、
この子は呑気に夢を見てんのか」と思ったが
自分が夢に出てきたと言われたのは嬉しかった

ウサギがトイレに行ってるあいだに
キノコは眠りにつくことができた

  
2024013020:44:01

155
再びキノコは目を覚ました
横ではまた、ウサギがいびきをかいていた

キノコは「もうあかんな」と思い
1階のリビングのソファで寝ることにした
階段を降りながらも聞こえるウサギのいびき

まさかと思いながら1階につくとキノコは驚いた
リビングの天井の向こうからウサギのいびきが聞こえるのだ

  
2024013020:48:12

156
ほどなくして、キノコは
ソファですやすやと眠ることができた
夢のなかにはウサギが出てきた

その日、二人は愛し合った
2時間はベッドのなかで
8時間は夢のなかで

  
2024013020:52:12

157
翌朝、キノコは自分の夢に
ウサギが出てきたことを伝えた

お互いが、お互いの夢のなかに出てきたのだ

人生のなかで最高の、
それこそ夢のようなお泊まり会だった

  
2024013020:56:12

158
そして二人は、朝ごはんを食べながら
misiaの everythingの替え歌を歌った

き「いび~きの、ときぃのなかでぇ~」
う「あなぁ~たのぉ、いびーきを聞いたぁ~」
き「そこそのままでええねんw
  あなぁ~たとぉ、あなたとめぐり会えたぁ~」

二人「いび~きのぉ、ときぃのなかでぇ~」

  
2024013020:58:46

158

<昨日はゆっこのうちで寝た
あの子と手をつないで

悪い予感のかけらもないよ

あの子のいびきを聞いたよ
1階で2階のいびきを聞いたんだ

二人夢を見たのよ
とってもよく似た夢を>

 

RCサクセション スローバラード

https://www.youtube.com/watch?v=-mQElMb3R5c

  
2024013021:05:27


159
キノコはスローバラードが大好きだった
だからお泊まり会で、夢にお互いが出てきたことがすごく嬉しかった

まえにスローバラードの元ネタが
ストーンズの「Love in Vain(むなしき愛)」だと聞いて
ウサギと一緒に聴いたが、キノコは断然スローバラードのほうがいいと思った


2024013109:13:37

160
ウサギは「むなしき愛」の方が好きといった
キノコはどこがいいのかわからなかった

ウサギは「こっちのほうがゆっくりした気分になる」といった

ウサギはあまり自分から音楽にハマるタイプではなかったが、キノコや友だちがカラオケで歌う曲や
勧めてくれる曲を聴いた

 

The Rolling Stones - Love In Vain (Live) - Official

https://www.youtube.com/watch?v=ryRDcE2sB2A

 

  
2024013109:19:47

161
キノコは絵はあまりうまくないが
漫画がそれなりに好きだったので漫画に所属していた

漫画部は、ゆるい部活で、顧問の先生も部員の自由にさせていた
描く派と読む派がいて、絵の下手なキノコはほとんど描くことはなかった

さらに図書館に行くと称して、ぶらぶらするのが部員活動だった

  
2024013109:24:03

162
ウサギは吹奏楽部で、ホルンも吹いていた

吹いていたといってもとりんずホルンを選択していただけで
発表会に出ることすらなかった
あまりにも上達しないので、図書館に行ってキノコと会ったりしていた

他の部員も、部員としてポンコツ落ちこぼれだが、どこか憎めない彼女の好きにさせていた

  
2024013109:26:47

163
一度だけ、発表会に出れることがあって
キノコは吹奏楽にはあまり興味がなかったが
ウサギの奮闘ぶりを見に行くことにした

ウサギは、たまにキョロキョロしながらも
自分のパートになると一生懸命吹いていた

キノコは、参観日や運動会に来たお母さんのように
そんなウサギを微笑ましく見ていた

  
2024013109:29:57

164
---
ウサギのもとに、キノコがマンションで倒れていた
という情報が届いた
自殺の可能性もあるという

彼女は半狂乱になって
「かえちゃんのお葬式に行かないと!
かえちゃんのお葬式に行かないと!」と言った

「あたしが今行ったら、まだ起き上がるかもしれない!!」というのだ

  
2024013109:34:09