【2】女芸人の百合小説。●<いびき皮>編の【その1】 ジェンダーSF小説「心地よい弾丸 heveanly bullet」
https://togetter.com/li/2303653
最新話はこちらから
https://twitter.com/dsa0/status/1751504547972026444
●これは夢日記です。同姓同名の人物はたまたまであり、実在の人物とは一切関係ありません。
●ジェンダーSF小説「心地よい弾丸 heveanly bullet」
【2】<いびき皮>編
----
48.
女芸人コンテストで優勝した
女漫才師
いびき川(旧名、いびき皮、いびきの時のなかで)
優勝ネタは、「私は人工子宮になりたい」だった。
Charisma.com / HATE
https://www.youtube.com/watch?v=ffH_Mp74xh4
2024012816:16:40
49.
<いびき皮>
「私は人工子宮になりたい」というネタで優勝した
女芸人
いびき皮(いびき・がわ)
・ボケ うさぎ(宇佐美優子)
・ツッコミ きのこ(木下かえで)
二人は、YouTube出身の芸人だった。
2024012817:10:05
50.
いびき皮の二人は、
ボケのウサギが勝手気ままにボケて、
ツッコミのキノコがどうにか形になるように
それを整えていくというスタイルだ
2024012817:19:55
51.
はじめ彼女らは、YouTubeで
ダブルボケのような感じで
わけのわからないことを言い続けていた
それは二人の単なる遊びとしてはじまったことだった
二人はガキ使のハガキコーナーとうそぶいていたが
そんなものではなく
まったく意味不明なものだった
2024012817:21:17
52.
キノコはネタを作りたかったが
作り方はわからず
ボケのウサギは、そもそも
ネタをろくに覚えることもできなかった
だから「人のコピーで練習」することもできなかった
ウサギはシュール系というか、天然で
やるたびに言う事が変わるのである
2024012817:23:20
53.
だから「練習」はつねに
お互いアドリブでやるしかなかった
それでも二人のなかでは「進化」していて、
その練習という遊びは続いていた
膨大な無駄にも思える時間を費やし
キノコは、「アドリブでやりながらそれをネタに書き起こす」というよくあるスタイルの一つを
偶然自分で「発見」する。
2024012817:28:54
54.
そこで逆に問題が生じてくる。
キノコは、ネタを作って書き直し、最高の完成作をやりたいが
ウサギは、絶対にネタを完全に覚えるなどできないのだ。
キノコは、3歩すすんだつもりが、2歩さがるような気分になっていた
2024012817:32:41
55.
ウサギはネタを覚えることができず、
やるたびに違うことを言う
結局、ウサギがネタどおりにやるということは諦めて
キノコは大筋をつくっておくが
ウサギがそこから外れたら、その都度
そのときの気分、客の反応で
対応していくというスタイルに落ち着いた
2024012818:36:51
56.
やがて、いびき皮は
幸いにも芸能事務所から声をかけられ
「いびき・かわ」と呼ばれるという理由で
「いびき川」に名前を変えた
2024012818:39:13
57.
そもそも、もっと前のコンビ名
「いびきの時のなかで」
その「いびき」はどこから来てるかというと
中学生時代に、Youtubeでやっていた「ネタ」から来ている
2024012818:41:27
58.
デビュー後も彼女たちのチャンネルはそのままで
検索すると彼女たちの
中学生時代の黒歴史が見れた
---
優子「いび~きのぉ、ときぃのな~かでぇ~え~!」
かえで「いいよ、いいよぉ!」
優子「いび~きのぉ、とき-のな~かでぇ~えぇえ~♪」
かえで「いいですよ、ゆっこさん!」
2024012818:43:47
59.
女芸人コンテストの決勝で
いびき皮は、ネタ「私は人工子宮になりたい」をやった
---
ウサギ「あたし人工子宮になりたいねん!
ほしたら、なんも考えんでええやろ?」
キノコ「今でもなんも考えてへんやん!」
ウサギ「まぁ」
キノコ「まぁて、その返しがなんも考えてへんねん」
2024012818:49:41
漫才はシメに近づく
こんなので優勝できるのか?
--
ウサギ「じゃあ諦めて、地蔵になるわ」
キノコ「もう夢あきらめるんか!
コロコロ変わりすぎやろ」
ウサギ「ほいでな、頭のとこに切れ込みが入ってて
そこからグレープフルーツの薄い皮むいて
食べやすくしたやつがのぞいてんねん」
2024012818:53:08
キノコ「気持ちわるっ
ていうかそのグレープフルーツは
あんたが食べたやつなんか、
誰かが食べるためなんかどっちやねん!
あんたとおったら、こっちまで頭おかしなるわ」
ウサギ「えー」
2024012818:56:01
キノコ「もう、顔もみたくない…」
ウサギ「え…そんなん」
キノコ「嘘やんか~、大好き!」
ウサギ「嬉しい~」
---
「こっちまで頭おかしなるわ」
「顔も見たくない」からの「大好き」
これがいびき皮の代表的なシメだった
2024012818:59:52
63
昔は「次の患者さんどうぞ-」でシメていたが
放送コード的にと、こっちのほうが客の反応がいいのでこっちになった。
キノコは当初から恥ずかしがっていたが、
事務所のすすめもあってこれをやっていた。
2024012819:03:35
64
そうこうして、いびき皮は女芸人コンテストで優勝した
ファンは大喜びし、面白いと言ってくれる人もいたが
ネットでは批判や疑問の声も少なくなかった。
・出来レースだ
・あれはシュール系じゃない
・子供の学芸会レベル
・あんなもんゴールデンタイムに流すなよ
・ウサギは天然じゃなくて計算
2024012820:17:30
65
うさぎはスマホで自分たちへの声を見ていた
「うん、なるほどねぇ」
きのこ「ほぉ、なにか面白い意見ありましたか?」
うさぎ「いろんな意見があるねぇ」
きのこ「それだけかいな」
キノコは褒められて喜び、貶されて気にするタイプだが
ウサギは褒められてもどこふく風
つねに飄々としていた
2024012820:21:55
66
そうして彼女たちは優勝を機に、どんどんテレビに出るようになっていった。
番組で、いびき皮の魅力はどこにあるのかと聞かれ
少し間をおいて、ウサギは自分の鼻を指さした
きのこ「喋らな」
じゃあ売れたのは、ウサギさんの力が大きいのかと問われると、ウサギは首をかしげた
2024012820:27:59
67
きのこ「誰のおかげで売れたのかって」
ウサギは手のひらを上にして
キノコのほうを指した
--
そんな彼女たちの成功への道は
スタートした途端にスキャンダルが発生した
ウサギが恋人とのデートを週刊誌がスクープしたのだ
相手はマネージャーの男だった
2024012820:32:50
68
恋人発覚くらい大したことない
これも話題作りではないかとの声もあったが
問題は大きかった
いびき皮の二人は「できている」というのは昔から
ファンのあいだでは噂になっていたのだ
つまり、ウサギの浮気発覚ということになる
2024012820:34:59
69
いびき皮は、(どちらがという説明もなく)
「急病のため」ということで突如、休業することになった。
スキャンダルは関係ないという事務所の説明だったが、
真相はわからない。
ファンのあいだでは、解散するのではという心配もされた。
2024012820:36:43
70
しばらくして
いびき皮は活動を再開した。
マネージャーは変更されたが、前のマネージャーはウサギと交際を続けているようだった。
「絶対にスキャンダルの話をしないこと」を条件に
番組に出演していた。
2024012820:52:33
71
一度、破天荒が売りの芸人が
彼女にほのめかすようなボケをぶっこんだ
彼は、いびき皮より遥かに先輩の売れっ子だったが
キノコはそのボケを無視した
彼女は完全に横をむいて冷えたような固まったような顔をしていた
先輩はとっさに振りを変えた
キノコ「すいません!今ぼーとしてましたwやば」
2024012821:00:11
(72)
それから二人は活動を再開したが
ネットでこんな声が聞こえだした
キノコの「顔がおかしい」というのだ
フリートークでも、ネタ中でも
キノコが硬直したような、心ここにあらずのような
独特の顔をするのである
先輩の話を無視した時とあの顔と同じだと言われ
「あの時の顔」と言われるようになった
73
だんだんと「あの時の顔」になる割合が増えていき
ほぼ初めから最後まで「あの時の顔」でネタを一本するときもあった
いびき皮は再度活動を中止することになった
二度目の活動中止のまえ、
ウサギの浮気発覚から精神科に通っているという噂もあった
ファンは、キノコが回復するのを願っていた
2024012821:12:38
74
復活したキノコはだいぶ快活としていた
ところがツッコミが暴力的になっていた
もちろん本当の暴力ではないのだが
客がちょっと引いたりして
ネタの邪魔になっているのだ
ましになったのかもしれないが
事務所としては結局、使いづらかった
2024012821:17:10
75
楽屋でキノコがウサギに暴力をはたらいている
という噂もあった。
舞台ではみね打ちのポーズだが楽屋では実際に殴ったり蹴ったりしているという。
キノコが「お前が悪いんやろ!」と怒鳴りながら
ウサギを殴り、ウサギは「ごめんなさい、全部私のせいや」と泣いている声がしたというのだ。
2024012908:47:52
76
キノコは「この脂肪のかたまりが!」とウサギを罵り
楽屋から子供のようにしゃくり上げるウサギの声が聞こえていた
細身で少し色黒のキノコと比べ
ウサギは、色白でキノコより少し身長が高く多少むちっとしてた
デビューしてから少し体重は増えていたが
世間でいうデブの範疇ではなかった
2024012908:55:23
77
いびき皮のファンは、きのこ派、うさぎ派に分かれ
スキャンダル前から敵対しているところがあった
ウサギの浮気スキャンダルを機に、うさぎ派の旗色は悪くなっていた
暴力事件の話で、きのこ派も反撃をくらっていた
全てはネット戦の話で、劇場では「ネタを普通に楽しむこと」がルールだった
2024012909:02:11
78
キノコは、コンビを継続したまま
ソロで活動することが多くなっていた
天然でさらにいじり方にコツのいるウサギと違って
元気で「普通の人間」のキノコは使いやすかった
放送作家として仕事もするようになっていた
2024012909:05:30
79
ウサギもソロ活動として、ライブハウスで
女芸人イベント「寝る子は育つ」を
共同主催したりしていたが
キノコとは収入には大きな差があった
キノコが、ウサギに新しい銀行口座を開設させ
「男に貢がないこと」を条件に
生活費を援助しているという話もあった
2024012909:08:54
80
その銀行口座は、キノコとウサギの
共同の財布のような面もあった
キノコもパスワードを把握し
いつでもネットでどれだけ使ったかなど
明細を見ることができ、多めにおろされてるときは
「これは何に使ったの?」とチェックしているのだという噂もあった
2024012909:11:54
81
キノコは、病状を悪化させることもあったが
自分なりに波を乗りこなしながら活動を続けいた。
その頃から彼女は、xでのネタ発表もやっていたが
波に溺れそうなときは意味不明にも思える投稿をし
「キノコの病状が悪化してる」
「これは新しいネタの実験なのか」とファンを中心に話題をよんだ
2024012909:17:02
82
キノコはxにて「、」と「。」のみで綴る
「ネタ」を発表しはじめた。
「最高傑作ができました。
ーーー
、、、、、。、、、、。、。
。。、。。。。、。、、
。 、 、 。、。」
彼女はそれに随分とハマり、
長短いくつものバリエーションの「作品」を生み出した。
2024012909:19:58
83
「わかる」「わからない」で話題になり
「そうやって話題にすることが狙いだ」という人もいた
「モールス信号化か?」などいろいろな憶測もでた。
一部、彼女の「、。」シリーズに大笑いする人達もいた
みな「お仲間」と呼ばれていた。
2024012909:25:00
84
xで「、。」を一番評価して
その議論の中心になって「わかる派」を代表してる人が、精神病院の入退院を繰り返しているだったのだ。
またその人のフォロワーや「わかる派」には、そういう人が多いと言われていた。
そうするうちに、だんだんと「わかるようになった」という人が出てきたのだ。
2024012909:27:01
85
「私もわかるようになった!」という人がチラホラ出始めるようになる頃。
松本興業の名誉会長、松本人志が
「ネタバレになっても良かったら、これのなにが面白いのか私が説明してもいいか?」と
キノコに直接、リプライを返してきたのだ
2024012909:28:52
86
松本人志は、かつてラジオで
「お笑いの才能があるかどうかは、
いくつもある赤い玉と白い玉を、どういう順番で出すかでわかる」
と言っていたのだ
その頃かなりご高齢の松本会長は、「俺のお笑い人生の最期の仕事としても、これについて触れたい」と言っていた
2024012909:32:19
87
その頃、ツイッターで一番議論の中心になっていた
「わかる派」の人が、自殺したことがニュースになった
テレビで流れたある女性の自殺から、ネット住人が
それが彼女だと発見したのだ
実際、彼女のツイートはそれ以降ピタリと止まっていた
2024012909:34:25
88
それを機に「あれを分かるようになると死ぬ」という噂が流れはじめた
「、。」シリーズは、小説ドグラ・マグラのような扱いになっていた
2024012909:35:37
89
そんなころ松本会長の訃報が流れた。
自殺ではなく老衰だった。
天珠をまっとうした彼の遺書の初めには、
彼の相方、そして幼馴染の放送作家、
そして妻と子供の名前が書かれ、
続いてこんなことが書かれていた。
---
2024012910:10:39
90
---
それから私の人生で出会ったすべての皆さん
ありがとう
私の耳は、世界一笑い声を聞いた耳であったばかりでなく
私自身、口から肛門がでるほど笑わせていただきました
ほんまにありがとう
日本、そして世界の平和を願って
松本人志
---
2024012910:13:25
91
そしてその遺書の横には
漫画「北斗の拳」の1ページ
ラオウが天を拳で指して立ち
「我が生涯に一片の悔いなし」
と書かれたものが置かれていたという
それは後年、松本会長が自分の人生の終わりを感じ始めたころに
単行本から取り外し、引き出しにしまっていたものだった
2024012910:17:41
92
<「お前が悪いんや!」
キノコ、新宿二丁目の公園で
泥酔、号泣
失禁して眠る>
週刊誌はスキャンダルを報じた
2024012910:20:16
93
新宿二丁目のバーで飲んだあと
キノコは公園で寝てしまっていた
地面に大の字になって寝ていた彼女は、
目を覚ましたときに股間に違和感を感じた
スウェットのパンツの中に手を入れると
彼女は驚いて声をあげ
慌てて公園のトイレに駆け込んだ
2024012912:00:30
94
彼女は驚きのあまり
一度女子トイレに行こうとしたが、間違えたと思ったのか
男子用に行きかけ
思い直してまた女子用に行った
彼女は個室に入り、ゆっくりと
スウェットパンツとパンティを
開けて股間をみおろした
そこには小学生くらいのおちんちんがついていた
2024012912:05:37
95
キノコは、おちんちんが
ついていることに驚くと同時に
おそるおそる元の自分のアソコあたりを触ってみた
玉のむこうには何もなかった
何もないところにおちんちんが付いたという感覚と同じくらいに
自分のアレがなくなったことに衝撃を覚えた
「こんなんで生きていけるのか?」
2024012912:09:01
96
「男はこれで普通なんだから大丈夫なんだろう」
そう思った
人間が鳥になったときに
翼が生えたこと以上に
腕がなくなったことに違和感をおぼえるようなものだろうか
キノコは次の瞬間こう思った
「これでウサギと結婚できる!」
キノコは鳥のように、ウサギのマンションに飛んでいった
2024012912:11:23
97
キノコは、ウサギのマンションにつき
エレベータのなかでスウェットパンツを開け、
自分のおちんちんを何度も見た。
それがドッキリや勘違いではなく、
「本当についてること」「自分に生えていること」を確かめるためにあれこれと触り、
また元のアソコがツルツルであることも確認した
2024012912:15:34
98
キノコが、彼女のドアのベルを何度も鳴らすが
壊れているのか音はせず、当然返事もない
近所迷惑にならないようにドアを何度か軽くノックしたが反応がない
キノコはなぜか不穏なものを感じ、
仕方なく試しにドアノブをひねってみると
鍵があいている
「ゆっこ-、開いているよ、大丈夫?」
2024012912:19:14
99
キノコがドアを開けなかを除くと
廊下のむこうに、ベッドからのそりと起き上がったウサギがいた
「大丈夫? 入るよ」
キノコは鍵を締め中に入った
ウサギはTシャツ一枚でぼんやりして
それでも?マークのような何事かという顔をしていた
きのこ「今から言うこと絶対に誰にも言ったらあかんで」
2024012912:23:17
うさぎは、わかったと真剣な顔でこくりと頷いた
きのこは自分が男になったことを伝えた
しかし、おちんちんが付いたこと
「結婚できるようになったこと」と
うさぎに男の恋人がいることは別の問題だった
それでもきのこは、この奇跡で何かが変わると確信していた
2024012912:27:32
101
うさぎは驚きの言葉を発した
「じゃあ一緒やね
あたしも男になったんよ」
Tシャツにパンティで寝ていた彼女が立ち上がり
無造作に下をずりおろすと
キノコより立派な、毛は生えていないが
中学、高校生くらいのおちんちんがついていた
2024012912:31:31
102
キノコは思った
「この子はいつでも間が悪い」
愕然とした
うさぎは「世界中の男女が入れ替わったんやろか?」と言って
二人でスマホやテレビを見たが
なにひとつそのことには触れていなかった
「今から出てくるんちゃう」とウサギは言ったが
どうやら自分たちだけに起きたことらしかった
2024012912:33:28
103
思えば、彼女の部屋で
こうやって会うのは久しぶりだった
キノコはまだ寝たりなかったので
そのまま二人で寝ることにした
疲れたキノコが、
ウサギの胸に顔をうずめるようにして眠りかけると
近くの部屋だろうか、
ジム・モリソンの「禁じられた二人」が聴こえてきた
2024012913:22:31
104
「禁じられた二人」は
「後年オネエ化していったジム・モリソン」が
AKB48の原曲を聴き、その歌詞とメロディに感銘をうけ
大胆なアレンジをして歌っていた
海外で爆発的な大ヒットソングとして成功し
日本でも「坂本九のスキヤキ」に次ぐものとして
とらえられていた
2024012913:25:12
105
「他の人ではだめなんです
男に生まれなかったなら
別れこなかった
僕が女に生まれていたならば
結ばれてた、二人
永遠を信じあってた
罪は男同士
残酷な運命に見をまかせ
禁じられた二人
泳ぎ疲れたら僕の腕で眠ればいい
水晶の船が僕達をいざなってくれるから」
前田敦子、大島優子 - 禁じられた2人
https://www.youtube.com/watch?v=kByOKnWAX00
2024012913:32:34
106
しばらく寝て、キノコは目を覚ました
マンションに来る前に公園の地面で寝ていたために
自分が汗や砂で汚れていることに気づいた
なにも言わないのもウサギらしかった
もし謝ったら「洗濯すれば大丈夫」とでも言うだろう
眠っているウサギをそのままにして
勝手にシャワーを浴びることにした
2024012913:45:59
107
この部屋には何度となく来てるし
シャワーも何度も使っている
言い方は悪いが、ここはキノコにとって
仮眠室でもありラブホテルでもあった
相手はもちろんウサギだけだ
前までは気が向いたら
いつでも来ていいような感じだった
2024012913:48:57
108
裸になったキノコは
シャワーの蛇口をひねるが
お湯が出てこない
水のほうにしてみてもお湯が出ない
元栓のようなものがあるわけでもなさそうだ
もう一度ひねろうとすると
さっき今度はきつく締めすぎたのか
固くてひねることができない
2024012915:13:11
109
シャワーヘッドを片手に奮闘するが
どうにもならないので諦めようとしてると
おしっこがしたくなってきた
そうやってもう一度ひねってみると
蛇口のハンドルが回転し
キノコの股間にお湯があたる
「もうこのまま、おしっこしてしまえ」
初のおちんちんおしっこだった
2024012915:16:50
110
新宿二丁目の公園で
目をさましたキノコはおしっこを漏らしており
近くのオカマバーからは
「禁じられた二人」のカラオケが聴こえていた
股間を触ってみたが
何もついているわけがなかった
キノコは虚しく、とぼとぼ家に帰っていった
2024012915:24:48
111
キノコは、泥酔事件を理由に活動自粛を命じられた
それは、いびき皮の自粛も同然だった
自粛中にもかかわらず、キノコの暴走は続いた
<いびき皮キノコ今度は傷害事件!!
オカマバーで
ニューハーフと大喧嘩>
<ホストで豪遊していたキノコ
備品を破壊し、600万円の損害賠償!
出禁に!>
2024012915:32:21
112
頭を悩ませた事務所は、とうとう
いびき皮と契約解除することにする
いびき皮が契約していた事務所
ジャスミンズは、
元お笑い芸人の男
ジャスミン南山が開設した事務所だ
2024012915:36:27
113
通称ジャスさんは、
インポで女性恐怖症だが
女芸人マニアだという
学生時代には落研に所属しており、
芸人をやめた後は、南山ユーモア教室をやっていたが
芸人としては成功しなかったが
人を発掘、指導する能力はあったようだ
2024012915:38:06
114
インポで女性恐怖症ということで
彼がスキャンダルを起こすことはないと
太鼓判を押されていたが
雇用していたマネージャーが
いびき皮の活動の障害となったことを
とても残念に思っていた
2024012915:40:09
115
そんななか、
いびき皮に再起してほしいと思っていたが
事務所全体のことを考えて
いびき皮を退所させることにした。
苦渋の決断だった。
ところが捨てる神あれば、拾う神あり
ということで、いびき皮は間を置かずして
別の事務所に移籍することができた
2024012915:43:02
116
事務所を移籍したキノコは
前の事務所の悪口をいいはじめた
ジャスさんには恩義はあったし
前事務所での活動などに
楽しい思い出もないわけではないが
同時に、頭の片隅に「ゆっこに浮気させたのは
前の事務所が仕組んだ陰謀」という考えが浮かんでいた
「マネージャーとジャスさんはグルだ」と
2024012915:46:22
117
新しい事務所は、ドラゴンフォース。
名前こそ大げさだが、前事務所よりだいぶ規模の小さいポンコツ会社だった。
ドラゴンフォースは、
DM法律事務所=ドラゴンマウンテンの代表が
半分、趣味の片手間でやってるような事務所だった。
2024012918:16:47
118
DMも大きな事務所ではなかったが、
一度、棚からぼたもちのような感じで
偶然「死刑を無罪に」できた裁判があり
そのことを例に「死刑を無罪にした法律事務所」ということで週刊誌に載ったことがある。
2024012918:19:07
119
キノコは、ドラゴンに移ってから
あまり大小を気にせず
コツコツと仕事をするようになった。
ドラゴン的には「いびき皮」目当てで仕事が増えて
知名度もあがり喜んでいた。
「法務に強いタレント事務所」として
問題児「いびき皮」を安値買いしたのは大成功だった
2024012918:21:53
120
誰もが使いづらい、問題児いびき皮。
芸能事務所としてはポンコツだが、法律トラブルに強いドラゴン。
うってつけの組み合わせだった。
彼女らが問題を起こしても、
ドラゴンは問題を仕事にしてる弁護士事務所が母体なのだ。
売れっ子だった二人を
手に入れるにはまたとないチャンスだった。
2024012918:26:38
121
キノコはその日、精神科の診察を終え
薬待ちをしていた
彼女は、広い薬局のイスの1つに座って
ミルミルを飲んでいた
最近の彼女は調子がよかった
薬も自分なりに減薬していた
そんな彼女がふと目を落とすと
受け取りカウンター近くの下の方に
「とんでもないもの」があるのを目にした
2024013013:03:43
122
キノコは以前、YouTubeの動画でこんな話を聞いた
人は「白熊のことは考えないで下さい」というと考えないことができないのだそうだ。
そう言われると、むしろ白熊のことを考えはじめるので、白熊を考えないためには、他の「戦車とかケーキとか他のこと」を考えるが必要があるのだという。
2024013013:09:18
123
キノコは、白熊を考えないために
遊んだり、仕事をしたり、あれこれと工夫をした
それでも時折、その白熊がひょこひょこでてくるので
ありとあらゆる救援を呼び寄せて、どうにかその白熊を
頭の中の奥の奥の小さな箱に、マトリョーシカのように何重にもして閉じ込めていた
2024013013:12:18
124
白熊は、広い薬局のいくつかある受け取りカウンターの
その横の足元に、ひょっこりと顔をだしてこちらを見ていた
キノコは戦慄した
また「あの時の顔」になる思いがした
待ってる間に読む用の書棚があり
そこにある雑誌にはこう書いてあった
<いびき川 ウサギ結婚!!
相手は元マネージャー>
2024013013:21:23
125
彼女は「すーっとした感じ」を使うことにした
「すーっと」は、
「あの時の顔」になった時にできる防御を、
自分にダメージなくできる彼女が編み出した技だった。
いわば「あの時の顔」の良いとこどりだった
今の彼女は進化していた
2024013013:32:56
126
白熊の攻撃に耐えながら
すーっとで応戦していた彼女は
「おちんちんがついてないか」調べたくなった
もしついていれば、これは夢ということになる
トイレに行こうかと思ったとき
自分の番号が呼ばれた
厳しい状況であったが、これは気をそらす援軍になるかもしれないと思った
2024013013:35:02